第19章 力の制御
ユナ side
リヴァイとハンジさんが訓練場から去って行って一人になった私は、片付けをせずに再び先程の立体機動の訓練を始めた。
胸のモヤモヤを拭いさりたくて、私は無心で体を動かした。
(リヴァイとハンジさん、2人でエルヴィン団長の所に行ったのかな)
「・・・はぁ、こんなの私らしくない!」
徐々に日がかげってきた。
視界が薄暗くなってきたため立体機動の訓練は終了し、片付けをして兵舎へと戻ると、途中でナナバさんに会った。
「あれ、ユナ?随分遅くまでやってたね。やっぱりリヴァイ兵長のしごきは厳しいの?」
いつも声を掛けてくれるナナバさんは、とてもサバサバとした人で、話していても苦にならない。
私が普通に話せる数少ない人の一人だ。
『いえ、兵長の訓練は終わっていましたが、少し居残りで自主トレしてました。』
「あんた・・・復帰初日から飛ばし過ぎなんじゃないの?ちゃんとセーブしながらやんなさいよね?」
『はい・・・そうですよね。ありがとうございます!気をつけます!』
「そうそう、詰め込み過ぎても良くないからさ。」
そう言って、ナナバさんは私に綺麗な顔で笑いかけてくれた。
そのまま一緒に食堂へ行き、隣に座って夕飯を食べた。
お酒に誘われたが、それはまた今度と丁寧にお断りさせてもらった。
「あんた、酒は飲める歳でしょ?」
『は、はい。ですが、お恥ずかしながらお酒は飲んだことがありません。』
「へぇ~!・・・じゃあ、今度改めて誘うよ。初めてでも飲みやすいの用意しておくから。」
そんなナナバさんとのやりとりは、気を使わなくて済んで、とても楽だった。
約束を取り交わして、私は自室へと戻った。
『はぁ、今日は疲れたなぁ・・・。』
(余計なことを色々考え過ぎたかも。)
私はベッドにダイブして天井を仰いだ。
リヴァイの傍にいたいと願うのは自分自身。
そのために調整兵団に身を置いている。
強くなるのも、そのためだ。
でも立場上、常に一緒にいられる訳じゃない。
昔のように暮らしたいなんて無理だ。
ここではリヴァイといるためには理由が必要だと言うことが、私の中では違和感を拭えなかった。
(理由がなければ・・・私はリヴァイの傍に居られない)
そんな漠然とした不安がじわじわと私の心に芽生え始めていた。