第4章 別れ
『♪~♪~♪~』
今日の夕飯は山で採れたきのこを入れたシチュー。
味見をして完璧だった。
『よし!美味しく出来た!父さん、きのこ好きだから喜ぶかな?』
ユナは鍋に蓋をして食器を取りに棚に近づいた。
その時、バァン!とドアの開く音がしたかと思うとケニーが入って来た。
『ケニー?!』
驚いて、ユナはケニーを見上げる。
「ここを出るぞ。」
ケニーはそれだけ言い、壁にかけてあったコートをユナに着せて腕を引いてドアへ歩き出す。
『ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ、ケニー!どうしたの?どこに行くの?まだ父さん帰って来てないの!』
ユナは状況が飲み込めずケニーをひき止める。
だが、ケニーはヒョイ、とユナを抱きかかえて外へ出る。
「説明は後だ。黙ってろ。」
ケニーは怖い程に低い声でゆっくりとそれだけを言い放ち、薄暗くなった道に歩を進める。
ユナはケニーの様子に、ただ事ではないと感じた。
ケニーの背中越しに見える我が家が遠ざかり、暗闇に飲み込まれてゆく。
胸に不安が押し寄せる中、ユナはケニーの服をギュッと握った。
ケニーはユナの頭にそっと手を乗せた。
ケニーの手はあったかかった。