第3章 父さんとケニー
「随分と娘らしくなってきやがったな、あいつも。」
口角を上げて言いながら、ケニーはドカッと椅子に腰掛けた。
「それにロード、お前は娘に甘いな。デレデレしやがってよぉ。先に逝っちまったリイサにも相当いれ込んでたが、今じゃ娘にもか!」
と鼻で笑うように言い捨てる。
しかしロードはニッコリと、
「まぁな。・・・かわいいよ。本当に大切な大切な、俺の宝だ。何があっても守り抜くよ。ユナだけは。」
とケニーに答える。
「ユナもアッカーマン家の血をひいてはいるが、リイサの体質も遺伝しているせいか、身体は弱い。本来のちからが十分に生かせない可能性が高い。アッカーマン一族である以上、これから先、あのこに危険がつきまとうかもしれない。・・・俺が守っていくよ。」
ロードは右手を握りしめ、その拳を見つめながら娘の今後を案じて言う。
そんな旧友の父親としての姿を、ケニーは真剣な眼差しで見ていた。
「・・・そのために姓をアッカーマンじゃなく、リイサの姓のスノーベルを名乗ってんだろ?ま、賢い選択かもしれねぇがよ。」
ケニーは、軽く鼻で笑うように言いながらも声音はどこか優しかった。
そこで、ロードはケニーに向き直ると、
「ケニー、私に万が一のことがあったらユナを頼む。安全な所へ・・・お前が最良と思ったようにでいい。お前にしか頼めない。」
とケニーに神妙な面持ちで語る。
「バァカ!このクソ野郎が。さっきの守り抜く宣言はどうしたってんだ?・・・そうならないように、お前が死にものぐるいでなんとかするんだな。」
テーブルの上の酒瓶を傾けて2つのグラスに注ぐと、1つをロードの前に置いた。
カチャンと軽く音を鳴らして、ケニーはそのままグラスに口をつけた。
ロードはケニーの言動に
「そうだな。弱気になったら駄目だな。・・・しっかりやるよ。」
と、笑顔でグラスを傾ける。
それから二人は、久しぶりに語り明かした。
少年時代から今までの思い出話に花を咲かせたのだった。