第1章 秘めたる想い
夕食後 、俺の部屋の扉を叩く音が聞こえてきた 。
「 貴兄 、いる ?」
「 増田か 、入って良いよ 。」
こうやって 、増田が夕食後に俺の部屋に来るのは珍しいことではなかった 。
むしろ日常茶飯事だ 。
「 また今日も来たの ? 笑 」
「 だめ 、だった ?」
駄目なんかじゃない 、むしろ嬉しいくらいだ 。
「 貴兄に聞きたいことがあるの 、」
「 ん 、なに ?」
増田が顔を赤くして俯く 。
「 貴兄って 、好きな人いる ?」
俺は飲んでいたお茶を吹き出しそうになった 。
「 は 、ちょ 、いきなり何 ?」
「 その反応は 、いるんだね 。」
増田だよ 、俺の好きな人は増田だよ 。
心の中でそう呟く 。
「 ん 、いるよ 。増田は ?」
のちに俺は 、増田にこの質問をしたことを後悔する 。
「 そりゃ 、私にだって好きな人いるよ 。」
きっと今の俺は 、酷い顔をしているだろう 。
必死に笑顔を作り 、
「 そりゃ 、そうだよな 。」
俺は精一杯の笑顔でそう言った 。