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真夏、昼、屋上、恋人

第1章 1


『ジャッカルなんてタマじゃないっしょ……いいとこジャックだわ、あんたみたいなお人好しは』
そんな事を言って以来、俺のことをジャックと呼ぶの目つきは、いつも以上に悪かった。
目つきが悪いというよりは、もともと三白眼で無表情なのが、暑さと眩しさで目を細めてるから睨んでるように見えるってことなんだが、逆光だわ姿勢が悪いわでガンつけてるようにしか見えない。いくら好きな女だって、そう見えるもんはそう見える。
「……なんでこんなとこいんの?」
「換気しねーから気分悪くなった。……そこ日なただろ、こっち座れよ」
「あー……サンキュ」
体をずらして座れる場所を空けてやると、は崩れるように影に入って立て膝で座り、うあー、と声を上げた。おっさんか。
「……暑いんだけど」
「暑くねー訳ねーだろ。その座り方やめろパンツ見えるぞ」
「他に誰が見んの」
「……恋人のパンツ見るのにこんなに残念な気持ちになるの、俺くらいじゃね」
はスカートがまとわりつくのが苦手らしく、普段はただ履くだけのスカートを夏だけは巻き上げて短くしている。
ただでさえ短いスカートで立て膝なんかしてやがるから、本気で太ももやらパンツやら見えるんだが、本人が堂々としすぎてこっちがいたたまれない。

「…………見せてやるんだから拝めば」
いや隠せよ。
この調子だから、正直気分が削がれる。
「萎えるわ……もっとこう恥じらいとか雰囲気とかあるだろ」
「女子かよ」
「女子はお前だよ」
そーだった、と呟くの額には大粒の汗が浮き、頰はうっすら赤くなっている。
「お前はなんでここ来たんだ?」
「あー……」
暑いのが好きなわけでもないのに、と聞くと、はぼんやり口を開けて、額の汗を拭った。
その仕草は、何となく俺に似ている気がする。
「……冷房がきつくて」
「きつい?」
「今の席、モロに風が当たるとこでさ……寒くなったから廊下出たんだけど、廊下だと蒸し暑くてきつかったから」
「おお、女子っぽい理由……」
「女子だよ」
「実感した」

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