• テキストサイズ

真夏、昼、屋上、恋人

第1章 1


屋上のドアを開けると、熱さが足にまとわりついた。首より下にはギラギラガンガン日差しが当たって、これも熱い。

今年も記録的な暑さとか言われてる毎日で、教室はどこもかしこも冷房でキンキンだ。
涼しくなってるのはいいんだが、熱い空気が入るのを嫌がって換気をしないせいか、どうも息苦しくなった。
ちょうど休み時間だったから廊下に出ると、肺が蒸し焼きになりそうな蒸気(断じて空気じゃない)が容赦なく喉に入ってきて、これはこれで少しもさっぱりしない。いくら俺ん家が年中自主的に節電中でクーラーのない生活に慣れてるとはいえ、これは無理。
と言っても教室に戻る気も起きず、せめて外気をと思って屋上まで上がってきたけど、

「結局熱いんじゃねーか……」
吸い込んじまった熱い空気をぶっはぁ、と吐き出しながら頭を掻く。大して歩いてもないのに、顔から頭から汗だくだ。
「今年の夏頭おかしいだろ……頭ねえけど……」
瞼に垂れてくる汗をぐっと拭う。
暑い。クッソ熱い。
でも、ここまで来て外に出ないのも、何となく損な気がした。



「あ゛ぁ〜……あちぃ……」
出入口の真裏に、貯水タンクが小さい日陰を作っていた。
そんなに長い時間日が当たってなかったらしく、べたんと座っても尻が焼けそうとまではいかない熱さだ。つまり、やっぱり暑い。

「こんなあちーのに授業とか学校アホだろ……」
壁にもたれてだらけきっていると、後ろの方で扉が開く音がした。ついで、「うわ」という声。
(おいおい、俺以外にもこんなとこ来る奴いんのかよ……つーか、今の声)
「か?」
「……ジャック?」
聞き間違いか、いやそんな訳ねえよな、と思いながら声をかけると、あいつだけの呼び方が返ってくる。
引きずるような足跡で裏に回り込んで来たのは、やっぱりだった。

/ 3ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp