第8章 姫巫女と最初の一週間
「ハグリッドからだ。僕の友達なんだ。午前の授業が終わったら、お茶を飲みに来ないかって。みんなも一緒に来ない?」
「一緒に行ってもいいの?」
「シオンさまが行くのなら、もちろん、あたくしもご一緒しますわ」
「ハリーの知り合いなら、あたしも会ってみたい」
けれど、マリアは「ちょっと待って!」と全員を止めた。
「招待してくれるのはありがたいけど、いくら何でも大勢で押しかけるのは無礼だわ」
「確かに、七人もいると窮屈になるかもしれませんね」
シャーロットが指を顎に当てて首を傾げる。
「私たちは、また今度誘ってちょうだい」
マリアの言葉に、ハリーは頷くしかなかった。
「あ、でも……シオンは一緒に来てくれない? 初めての友達だし、ハグリッドに紹介したいんだ。ロンも……どうかな?」
「うん。ありがとう、ハリー!」
「僕も行くよ!」
友達だと認識してくれていることが嬉しい。
ヒマワリが「あたくしも行きます!」と騒いだが、マリアがどうにか押さえ込んだ。
こうして、ハリーはハグリッドからの手紙の裏に返事を書いて、ヘドウィグに託したのだった。
* * *
『魔法薬学』の授業は、地下牢で行われた。
城の中は教室より寒く、壁にはガラス瓶がズラリと並んでおり、中身は空だが薄気味悪い。
セブルス・スネイプは、黒い髪に黒い瞳、黒いマントと暗い色を纏い、授業を始める前に出席を取った。
そして、ハリーの名前を呼んで、止める。
「あぁ、さよう。ハリー・ポッター。我らが新しいスターだね」
スリザリン側から冷やかすような笑い声が聞こえ、シオンは気分が悪くなった。
チラリと見れば、マルフォイを筆頭に、クラッブやゴイルも笑っている。
シェリルが立ち上がって何かを言おうとするが、シャーロットがそれを止めた。
出席を取り終わると、スネイプは生徒を見渡す。
彼の黒い瞳は、底なしの沼のように淀んでいた。
「『魔法薬学』では、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」
決して大きな声ではないのに、その言葉は漏れることなく生徒の耳に届く。