第6章 姫巫女と入学式
「あぁ……『普通の生徒が入る寮』とかないのかな……」
「あ、いいな、それ。ハリー、わたしも入れてくれる?」
「シオンなら大歓迎だよ」
そんな話をしていると緊張が紛れ、二人は小さく笑い合った。
やがて、ヒキガエルに逃げられていた顔の丸い少年――「ロングボトム、ネビル」が呼ばれた。
途中で転んでしまった彼の寮の決定には時間が掛かり、ようやく『グリフィンドール!』と帽子が叫ぶ。
汽車で因縁をつけてきたクラッブ、ゴイル、そしてマルフォイは揃ってスリザリンへ。
彼らにピッタリだと思ったのは、自分だけではないだろう。
あの寮へは絶対に入りたくないと思っているのも。
残っている生徒も、数を半分ほどまで減らしていた。
そして、ついに――……。
「ポッター、ハリー!」
ハリーの名前が呼ばれ、彼が前へ進み出る。
すると一瞬、大広間は水を打ったように静かになり、次にはザワザワとさざめいた。
「ポッターって、そう言った?」
「あのハリー・ポッターなの?」
そんな興奮した声が耳に届く。
ハリーが帽子を被っていた時間は、他の誰よりも長かった。
一分……二分……それ以上の長い時間を掛けて、ようやく組分け帽子が叫ぶ。
『グリフィンドール!』
帽子を脱いだハリーは、緊張から解放されたからか、フラフラとグリフィンドールのテーブルへと向かった。
これまで以上の歓声と割れるような拍手に迎えられたハリーが、監督生であるパーシー・ウィーズリーと握手を交わす。
フレッドとジョージは嬉しそうに、「ポッターを取った!」とガッツポーズをしていた。
彼の有名な『ハリー・ポッター』を迎えられて、嬉しくない寮生など一人もいないだろう。
誰もが憧れる『生き残った少年』――栄誉を招き、災いを呼ぶ……。
ギュッとローブを握りしめると、コツンッと何かに指が触れた。
それは、初代『龍宮の姫巫女』が使っていたという、『サカキの杖』だ。
シオンはグッと唇を噛みしめる。