第21章 姫巫女と一年の終わり
マリアやシャーロット、シェリル、ハリー、ロン、ハーマイオニー。
みんなと別れ、シオンはヒマワリと九と四分の三番線を出て、マグルたちでごった返すプラットフォームへと出る。
カートを押しながら並んで歩いていると、不意にヒマワリが口を開いた。
「シオンさま。あたくしも家へ帰りますわ。一度、両親と話そうと思いますの」
「そっか……きっと大変だろうね」
自分どころか、家族としての認識すら怪しいヒマワリの家庭事情。想像しただけでも憂鬱になってしまう。
「ヒマワリ。辛くなったら、いつでも家に来ていいから! ヒマワリの部屋だって用意できるし……きっと、みんな歓迎するよ!」
もしかしたら、分家の人間が何か嫌味を言ってくるかもしれない。けれど、もしそうなったら、今度こそ自分が黙らせるのだ。
ギュッと、決意を込めて拳を握る。すると、ヒマワリは一瞬だけ目を丸くして、ふふっと声を立てて笑った。
「そうですね。そのときはお願いします」
ヒマワリと別れの挨拶を交わし、シオンは駅の出口へと歩く。そこへ、遠くから自分の名前を呼ぶ声がして振り返った。
「シオン!」
「ジョージさん!」
肩を大きく上下させながら呼吸を整えたジョージはシオンを見下ろす。手にカートを持っていないところを見ると、家族を待たせているのであろう。
「ゴメン、呼び止めて。どうしても、夏休みに入る前にシオンと話しておきたくて」
少し照れた表情をするジョージに、シオンも緊張して微かに赤くなった顔を伏せた。