第18章 姫巫女と禁じられた森
「そんなの、ダメ……絶対ダメだよ。わたしたち、『賢者の石』を守ろうって言ってたじゃない。それなのに、『賢者の石』を盗られて、『あの人』が甦って、ハリーが殺されたんじゃ……最悪だよ、それ……最悪の結末だよ……」
以前に占った凶兆が脳裏を過ぎる。
一歩間違えれば命を落とすこととなる、強い凶兆の卦。
ハリーが言ったことは、決して起こり得ないことではないと、シオンは分かっていた。
「ハリー。ダンブルドアは、『あの人』が唯一恐れている人だって、みんなが言ってるじゃない。ダンブルドアが傍にいる限り、『あの人』はあなたに指一本触れることはできないわ。それに、ケンタウルスが正しいだなんて誰が言ったの? きっと占いみたいなものよ。マクゴナガル先生が以前に仰ったじゃない。占いは魔法の中でも特に不正確な分野だって」
「そうだよ、ハリー。占いは確定した未来じゃない。まだ、何も決まってない。だから、『殺される』なんて思わないで」
ケンタウルスの星読みでは、ハリーが死ぬ未来が見えていた。
けれど、シオンの占いにその未来は出ていない。
占い直そうとも思わなかった。
なぜなら、『ハリー・ポッターは死なない』という確信があったからだ。
ハリーは絶対に殺させない。
強い決意を胸に、過った恐怖をねじ伏せる。
そこへ、ロンが「あ」と声を上げた。暖炉の傍に、透明マントを見つけたのだ。
「これ、天文台に置きっぱなしにしたはずなのに……」
透明マントを拾い上げて呆然と呟くハリーの手元を、三人は揃って覗き込む。マントには、小さなメモがピンで止められていた。
ーー『必要なときのために』
「必要なときって、何だろう?」
首を傾げるハリーに、「何だっていいよ」とあっけらかんとロンが返す。
「さぁ、そろそろ寝ましょう。このままじゃ寝過ごしちゃうわ」
ハーマイオニーに促され、ハリーとロンに挨拶をし、シオンは女子寮へ続く階段を登った。
* * *