第18章 姫巫女と禁じられた森
「…………終わった、の?」
最初に我に返ったハーマイオニーに、月映はしかつめらしく『うむ』と頷く。
『純代か、良い名だ。あやつも喜んでおろう』
くるりと自分の周囲を旋回する月映に気恥ずかしさを覚え、シオンは頬を染めて照れた。
「ね、ねぇ……さっきのユニコーンはどこに行っちゃったの?」
「龍宮の異界だよ。たぶん、今頃歓迎を受けてるんじゃないかな?」
契約が成立したということは、龍宮の妖たちから同意をもらえたということだ。
龍宮に仕える妖には、少なからず西洋のモンスターもいる。
きっと、話の合う者もいるだろう。
『無事に契約を見届けられたし、我は戻ろう』
フッと姿を消した月映に、シオンは頭を下げた。
「ゲツエイも、そのリュウグウの異界ってところにいるの?」
「そうだよ、ハリー。ただ、月映さまは別格だから、他の子たちと違って出入りは自由だし、わたしとある程度意識を共有してるから、危なくなったら進んで助けてくれるの」
ふぅん、とハリーとハーマイオニーは揃って相槌を打つ。
「……話は済んだようですね」
不意に、フィレンツェが動いた。
「では、私はここで。幸運を祈りますよ、ハリー・ポッター。ケンタウルスでさえ、惑星の読みを間違えたことがある。今回もそうなりますように」
そう言い残して、フィレンツェは森の深い茂みへと消えていく。
その背中を見送る中、シオンの頭ではずっと、警鐘がなり続けていた。
* * *