第18章 姫巫女と禁じられた森
マントを着たその影のような者は、ユニコーンに近づき、傍らに身をかがめ、傷口から血を啜り始めた。
「ぎゃぁあぁぁぁぁあぁぁぁ―――――ッ‼」
マルフォイが絶叫して逃げ、後を追うようにファングもその場から走り去った。
マルフォイたちの悲鳴に気づいたのか、フードの影が顔を上げた。ハリーを正面から見たように感じたのは、気のせいではないだろう。
顔から滴り落ちる銀色の血液にも、そのフードの下の顔は見えない。ズッ…と影が迫ると、ハリーが額の傷を押さえて呻いた。
「うっ……」
「ハリー!」
よろめいたハリーの身体を支え、影を見ると、先ほどよりも近づいて来ていた。
ハリーを狙っている。そう察したシオンは、彼を背に庇い、命じた。
「――青玉(せいぎょく)、藍玉(らんぎょく)、蒼玉(そうぎょく)! ハリーを守って!」
カッと青白い光が奔り、影を消し去るほどの光を発する。同時に金色の軌跡が大きな口を開き、フードの影へと迫った。
パンッと弾けるような音が耳に届いたと思ったときには、光は収束し、薄暗い森の景色が広がる。
「みんな……ッ!」
『大事ない。魔の力が強過ぎて弾かれはしたが無事だ』
「そうですか、よかった……ありがとうございます、月映さま」
『ふん。しかし、アレは相当な力を持っておる。我まで弾くとは――……シオンよ、心せよ。そなたらを取り巻く闇は深く、大きなものだ』
「はい」
シオンが頷いたのを確認し、月映は姿を消す。
「シオン、大丈夫?」
「ハリーこそ……大丈夫なの?」
顔色が良くなったハリーに、シオンもホッと安堵の息を吐いた。