第18章 姫巫女と禁じられた森
「フィルチか? 急いでくれ。俺はもう出発したい」
どうやら、ハグリッドが一緒のようだ。
もしかしたら、そこまで酷い処罰はないのかもしれない。
そう考えたのはシオンだけではないようで、ハリーとハーマイオニーの身体からも緊張が抜ける。
そんなシオンたちの様子に気づいたようで、フィルチがニタァッと口角を上げた。
「あの木偶の坊と一緒に楽しもうと思っているんだろうねぇ? 坊やたち、もう一度よく考えた方がいいねぇ……君たちがこれから行くのは、森の中だ」
そう言って、フィルチが指をさしたのは、『禁じられた森』だった。
ネビルが「そんな!」と悲鳴を上げ、マルフォイも青白い顔をさらに青くする。
「森だって? そんなところに夜行けないよ。そもそも、生徒が入っちゃいけない場所だろう?」
マルフォイの言う通りだ。
危険な動物やモンスターが棲み着いている、危険な森だ。
初日にダンブルドアも、『禁じられた森』に入ってはならないと言っていたはず。
「さぁ、どうだったかねぇ?」
意地悪くはぐらかすフィルチには、もう何を聞いても無意味なようだ。
怯えれば怯えただけ、この男を喜ばすことになる。
フィルチがシオンたちを怖がらせている間に、ハグリッドがファングを従えて現れた。
大きな石弓を持ち、肩に矢筒(やたて)を背負っている。
「もう時間だ。俺はもう三十分も待ったぞ。ハリー、ハーマイオニー、シオン、大丈夫か?」
「こいつらは罰を受けに来たんだ。あんまり仲良くするわけにはいきませんよねぇ、ハグリッド」
冷たく言い放つフィルチだが、ハグリッドはムッと彼を睨みつける。
「どうせ、詰まらん説教でも垂れてたんだろう。え? 説教をするのはお前の役目じゃねぇはずだ。お前の役目はもう終わりだ。ここからは俺が引き受ける」
「夜明けに戻って来るよ。こいつらの身体の残ってる部分だけ引き取りにな」
そんな不気味な言葉を残して、フィルチは城へ帰って行った。