第17章 姫巫女とドラゴン
四人は顔を見合わせた。
「透明マントがある。僕ともう一人とノーバートくらいなら隠せると思うけど、かなりギリギリ。もしかしたら、足がはみ出ちゃうかも」
「透明マント以外で、姿を隠せるとしたら……」
ハリーに続き、ハーマイオニーも顎に手を当てて唸る。
そして、ゆっくりとシオンへ視線を移動させた。
「シオン。そういえば、初めてフラッフィーに会ったあの夜、東洋の魔法でフィルチから私たちを隠してくれたわよね?」
「え⁉ えっと……摩利支天隠形法のこと、かな?」
「そう、それよ!」
「ま、待って! 移動しながら術を使うなんて無理だよ!」
魔法と同じように、術にも集中力が必要となる。とても走りながら行使できる自信はなかった。
がっくりと肩を落としかけたハーマイオニーだったが、「あ」とすぐに思いつく。
「あの布みたいなモンスターに乗ってだったらできるんじゃない?」
「布って……雲河? 確かに……」
《一反木綿》の雲河に乗ってであれば、術を使うことも可能だ。
「よし、決まりだな! すぐにチャーリーへ返事を書かなきゃ」
治った手でパチンと指を鳴らすロンに、ハリーも頷く。
「土曜日の真夜中で、全て終わるよ」
* * *
迎えた土曜日の真夜中――その場にロンの姿はなく、シオンとハリー、ハーマイオニーだけがいた。三人の表情は険しく、緊張感が走っている。
「今さら計画は変えられないよ」
ハリーが固い声音で言った。
体調を崩して、ロンが倒れてしまったのだ。
しかも、チャーリーの手紙を挟んだ本を、運悪く通りかかったマルフォイに取られたらしい。
「大丈夫。マルフォイは透明マントのことも、シオンの術のことも知らないわ」
「きっと、大丈夫だよね。このままノーバートを飼い続けるなんてできないし……これが最後のチャンスだもん」
危険でもやらなくては。
ハーマイオニーに続いて、シオンも己を奮い立たせた。
予定よりやや時間は押し気味である。