第16章 姫巫女と真相への一歩
「僕は急いで箒を取りに戻って、森へ向かったんだ。そしたら、そこでスネイプと――クィレル先生の話を聞いたんだ。二人は、『賢者の石』について話してた。スネイプは『ハグリッドの野獣をどう出し抜くか』って、クィレル先生に聞いたんだ」
「『ハグリッドの野獣』っていうのは、きっとフラッフィーのことね」
「間違いないな。歌が有効だって知らないんだ」
頷くハーマイオニーとロンに、ハリーもギュッと拳を握った。
「僕らは正しかった。フラッフィーが守っているのは『賢者の石』。シオン、やっぱりスネイプが犯人だよ。手に入れるのを手伝えって、クィレルを脅していたんだ」
「そ、それは……」
だが、ここまできても、シオンは彼らの意見に賛同しかねた。
何かが違う。シオンの中で、何かが引っかかっているのだ。
けれど、シオンも納得したと、三人は話を続けた。
「それと、クィレルの『怪しげなまやかし』のことも何か話してた」
「『怪しげなまやかし』?」
オウム返しにシオンは尋ねるが、それが何を示しているのかは聞いていないようだ。
「分からないけど……フラッフィー以外にも、何か別なものが石を守っているんだと思う。きっと、人を惑わすような魔法がいっぱい掛けてあるんだよ。クィレルが闇の魔術に対抗する呪文を掛けて、スネイプがそれを破らなくちゃいけないのかもしれない」
「それじゃあ、『賢者の石』が安全なのは、クィレルがスネイプに抵抗している間だけということになるわ」
「それじゃ、三日と保たないな。石はすぐになくなっちまうよ」
確かに、クィレルは気の弱い男だ。スネイプの脅しにいつまでも耐えられるとは思えない。
あまり悠長に構えていることはできないようだ。
何か策を立てないと、と意気込む三人に、シオンの心は不安で満たされていた。