第15章 姫巫女と大祓儀式
「ただ……ハリーには『凶兆』が出ています。それも、今日とか明日とか、来年とか再来年とか、すぐに終わるようなものじゃなくて……もっと、ずっと先まで……」
きっとそれは、ホグワーツを卒業するまで何年もずっと続くだろう。
もしかしたら、この『凶兆』は死ぬまで続くかもしれない。
どうすればいいのか、それはシオンにも分からない。
それでも、彼が手を伸ばして、助けを呼んだときに駆けつけられるような。
そんな位置にいてあげたい。
だって、彼は友達なのだから。
それはハリーだけに限らず、ホグワーツでできたたくさんの友達も。
当主は短く息を吐き、しばらく沈黙した。
やがて、切れ長の瞳を娘へと向ける。
「……私はお前に、ハリー・ポッターに関わらぬよう言った。強い力は、栄誉だけでなく災いも呼ぶ、と」
「はい」
だが、と当主は一度立ち上がり、シオンの前で膝を折った。
「お前には力がある。初代『龍宮の姫巫女』に匹敵する力と、我らが祭神『王龍』の守護が。お前が真に望むのならば、災いを跳ね返すことも可能だろう――今のお前ならば」
当主である父の言葉に、シオンはハッと息を呑む。
力強い父の言葉は、シオンの中に新たな勇気を呼び起こした。
目頭が熱くなり、込み上げる涙を必死で堪えながら、シオンは大きく頷く。
「グリフィンドールだったな、お前が選ばれたのは」
「はい」
「自分の娘が同じ寮に選ばれるとは……存外嬉しいものだ」
珍しく己の心中を口にする父に、シオンは「はい!」と返事をした。
「わたしも、父上と同じ寮に入れて、嬉しいです」
はにかむように笑う娘の頭を一撫でした当主は、「ところで」と切り出す。
「その首飾りはどうした?」
瞬間、シオンはジョージに抱きしめられたことや、汽車の中でシェリルに聞いたことなどを思い出し、ボンッと顔を赤くした。
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