第14章 姫巫女とクリスマス
十二月も半ばになって、ホグワーツは毎日のように深い雪に覆われていた。
もうすぐ、クリスマスがやって来る。
「ねぇ。あなたたちはクリスマス、どうするの?」
グリフィンドールの寮部屋で、マリアが聞いてきた。
「あたしは帰る。クリスマスは家で過ごす約束」
「私も帰ります。年末年始は親族と過ごす決まりなので。マリアちゃんは?」
「もちろん、帰るわ。シオンとヒマワリは?」
「あたくしは残ります……と、言いたいところですが……」
マリアの問いに答えながら、ヒマワリがその視線をシオンに向ける。
「大晦日には龍宮の本家で『大祓儀式(おおはらえのぎしき)』がありますので、あたくしはお手伝いに行かせて頂きますわ。ね、シオンさま。いいでしょう?」
「え? あ、うん……それはいいけど……」
「『オオハラエノギシキ』って?」
「えっと、それはね……一年の穢れを祓う儀式のことだよ」
シェリルの問いに、シオンは簡潔に答えた。
龍宮一族では、大晦日に『大祓儀式』をするしきたりがある。
参加するのは、龍宮一族の中でも本家に近しい血筋の一族ばかりだが。
『龍宮の姫巫女』であるシオンは、その儀式で舞を捧げる役目を担っているのだ。
この舞は『神に捧げる』ものと、『一年の穢れを祓う』ものの、二つの役割がある。
「でも、ヒマワリ……お家はいいの?」
「えぇ、全く。二人とも、お互いの愛人と過ごすのに忙しいですから、帰ったところで暇を持て余すだけですわ」
にこやかに話すヒマワリに、シオンたちは何も返す言葉が見つからなかった。
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