第13章 姫巫女とクィディッチ
「――奏枝(カナエ)、お願い」
『カナに全部お任せなのです!』
手のひらサイズの小さな姿で現れた少女を、シオンは肩に乗せる。
本当は、こんなことに奏枝の力を借りたくはないのだが……。
それでも、《覚(さとり)》である彼女の力を使えば、スネイプがどう事件に関わっているのかが分かる。
「ごめんね、奏枝……」
『気にすることないのです。姫さまがカナの力を悪用しようとしてるわけじゃないことは、全部分かってるのです。さぁ、黒魔人の正体を暴きに行くのです!』
奏枝の言葉に苦笑しながらも、彼女が気遣ってくれているのだと分かり、胸が温かくなった。
スネイプたち教師陣がいるスタンドまでやってきた。
階段を駆け上がったところで、スタンド内の観客席を見渡した瞬間、ゾワッと急激に身体が冷える。
「ぁ……っ⁉」
『ひ……っ⁉』
パシュンッ…と音を立てて奏枝が姿を消した。
今の感覚はなんだ、と思うのと同時に、グラグラと揺れる脳内に身体がふらつく。
ドン…ッと誰かにぶつかったことで、シオンは我に返り、慌てて謝罪した。
「す……すみません、クィレル先生!」
紫色のターバンを巻き、ニンニクの臭いを漂わせる闇の防衛術を担当する教師に、シオンは慌てて頭を下げる。
「ひ……っ、い、いえ、こちっ! こちらも、よ、よそ見を……!」
失礼、と断りを入れたクィレルがビクビクとしながら去っていくと、ハーマイオニーの姿は見えなくなっていた。
「は、ハーマイオニー?」
彼女の姿はすぐに見つけられた。
スネイプの後ろに回ったハーマイオニーが、ローブの懐から杖を取り出してしゃがみこみ、小さく呪文を唱える。
「《ラカーナム・インフラマーレイ(服よ、燃えよ)》!」
彼女の杖から鮮やかな青の炎が飛び出し、スネイプのマントの裾に燃え移った。
炎は段々と燃え上がり、先に気づいたのは、彼の近くにいた別の教師だ。
周囲の騒がしさにようやく異変に気づいたスネイプが、裾を踏みつけて火を消す。