第13章 姫巫女とクィディッチ
スニッチを追いかける二人のシーカーを、他の選手たちは自分の役目も忘れて呆然と眺めていた。
シオンは目を凝らしてハリーの姿を追いかける。
スピードだけならば、ハリーの方が速いようだ。
それに気づいたのか。スリザリンのキャプテンであるフリントが、ハリーの進行方向から勢いよくぶつかって彼を箒から突き落とそうとした。
誰がどう見ても、明らかな妨害行為。
箒が弾き出されるもどうにかしがみついたハリーに、シオンはホッと胸を撫で下ろす。
グリフィンドールの観客席から「反則だ!」という声が上がる中、フリントは審判であるマダム・フーチから厳重注意を受け、グリフィンドール・チームには、スリザリンのゴールポストへ向けてのフリーシュートが与えられた。
黄金のスニッチは、一連の騒ぎの中で行方をくらませてしまったようだ。
シオンの後ろでは、トーマス・ディーンが叫ぶ。
「退場させろ、審判!」
「サッカーじゃないんだよ、ディーン! クィディッチに退場はないんだ!」
サッカー好きのディーンが「レッドカードだ!」と批判するのを、ロンが慌てて宥めた。
だが、内心はシオンもディーンに同意見である。
あんなに酷い試合をする選手がいては、本当に死人が出てしまうのではないか。
一歩間違えれば、ハリーは確実に箒から落とされていた。
その件についてはハグリッドも同意見のようで、「ルールを変えるべきだわい」と苦々しく口にする。