第13章 姫巫女とクィディッチ
十一月に入ると、寒さが一段と厳しくなった。
ホグワーツの校舎を取り囲む山々は凍りつき、湖は氷が張りつめ、校庭には毎朝霜が降りている。
窓からは、防寒着で一回り大きく見えるハグリッドが、クィディッチ競技場のグラウンドの霜取りをしている姿が見られた。
もうすぐ、クィディッチのシーズンがやって来る。
そのための霜取りだろう。
ハリーもクィディッチの練習が追い込みになっていっているようだ。
ハーマイオニーと友達になれなければ、毎日出される宿題まで手が回らなかっただろう。
シオンも、得意科目であれば力になれるのだが、彼女ほど勉強ができるわけではないので、得意科目でも逆に教わることすら合った。
ハーマイオニー・グレンジャーは、トロールの一件以来、校則違反について口うるさく言わない。
性格も随分と柔らかくなり、ハリーやロンと同じように、一緒に過ごす時間も多くなっている。
ルームメイトのマリアやシャーロット、シェリル、ヒマワリと話している姿も見られるようになり、ハリーやロンも合わせて、談話室で宿題をすることも珍しくはなかった。
* * *
ハリーのデビュー戦の前日。
この日、シオンがヒマワリたち四人のルームメイトと中庭に面した廊下を歩いていると、その中庭を見てシェリルが足を止めた。
「どうしたの、シェリル?」
マリアが尋ねれば、彼女は抑揚のない声で短く答える。
「ハリーたちが、スネイプ先生にいじめられてる」
シェリルの視線を追えば、中庭にはハリーとロン、ハーマイオニーが身を寄せ合っていて、そこにいたスネイプがこちらへ向かってきていた。
怪我をしているのか、片足を引きずっているようだ。
彼はシオンたちに気づき、足を止める。
無言で見下ろしてくるスネイプに、シオンは隣にいたヒマワリの背中へ身を隠した。
「こんにちは、スネイプ先生」
シャーロットが花のように可憐に微笑めば、スネイプも表情を変えずに「こんにちは」と短く返す。
片足を引きずりながら去って行く黒い影を見送って、シェリルがハリーたちへ駆け寄った。