第11章 姫巫女とハロウィーン
ケルベロスと遭遇した翌日。
早起きが得意なシオンも疲労が抜けきれず、すぐには起きることができなかった。
同室のマリアやヒマワリたちに説明をできるはずもなく、「珍しい」と目を丸くする彼女たちを曖昧に躱し、大広間へと向かう。
そこには、シオンと同じように疲れた表情をした、ハリーとロンがいた。
シオンは二人の隣に座り、少女を挟むようにして、ヒマワリやマリア、シャーロットとシェリルが横並びに座る。
「マルフォイのヤツがさ、さっき、僕たちを見て驚いてたよ」
「そりゃあ、そうだよな。当然、僕たちがフィルチに見つかって、退学になるって思ってたんだから」
「シオンがいなかったら、間違いなくそうなってただろうけどね」
「た、たまたま運が良かっただけだよ」
そう謙遜してみるものの、悪い気はしない。
自分の力で、誰かを助けられるのは誇らしい気持ちだ。
とはいえ、昨日のような目に遭うのはこりごりだが。
「ねぇ、シオン……ロンには話したんだけどさ。実は……」
突然ハリーが、「気になることがあるんだけど……」と、シオンの隣に座るヒマワリに聞かれないよう気にしながら、声を潜めて話し出した。
ハリーが入学する前、ハグリッドと入学に必要な教材の買い出しに行った日のこと。
ハグリッドは、グリンゴッツから包みを取り出して持ち帰ったのだそうだ。
その包みが入っていた金庫は、他の金庫よりもかなり厳重に警備されており、ハグリッド自身も、包みについて話したがらなかったらしい。
ハリーはその包みが、グリンゴッツからホグワーツへ移されたのではないかと語った。