第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
どうしよう……。
その言葉が、一体何度頭を過ぎったことだろう。
けれど、結局具体的な案など浮かばず、シオンは夕食の時間を迎えていた。
グリフィンドール寮の部屋では、落ち込むシェリルをマリアとシャーロットが慰めている。
シオンとヒマワリは、マリアたちと交代で食事をすることとなり、先に頂くこととなっていた。
だが、当然食欲などあるわけがない。
もしかしたら、ハリーは退学になるかもしれないのだ。
トイレに立ったヒマワリを待ちながら、シオンは大広間でたくさんの料理を前にため息を吐いた。
『シオンよ……ため息を吐いたところで何も変わらぬ。ただ、そなたの気が滅入るだけよ』
「でも……月映さま……。わたしに何かできることはないですか?」
『今は静かに待て。ハリーの退学は決定事項ではないのだろう?』
「ですが……」
そこへ、慣れた気配がシオンの前に立った。
「ロン……」
名前を呼ぶと、赤毛の少年が力なく笑う。
『そなたも酷い顔をしておるな、ロンよ』
「そりゃ、こんなときに笑ってられないよ。シオンは一人? マリアたちは?」
「シェリルが部屋で落ち込んでて……今はマリアとシャーロットがついてるの。交代でご飯を食べようってことになって……わたしとヒマワリが先に……」
「そのヒマワリは?」
「今、お手洗いに行ってるよ」
そっか、と返事をしたロンがシオンの隣に腰を下ろした。
しばらくの間、二人はのろのろと夕食の料理を口に運ぶ。
しかし、ため息ばかりで全く進まない。
不意に、ザワザワと周囲が騒がしくなった。
何事かと二人が顔を上げれば、眼鏡を掛けた少年が笑顔で駆ける。
「ロン、シオン!」
「「ハリー!」」
声を揃えて呼べば、ハリーはロンの隣に座った。