【防衛部】BITTER&SWEET CHOCOLAT
第1章 双つ星に魅せられて
「やっぱり、アイドルって忙しいんだなー…」
「おーい、雪菜ー」
「こんにちは、雪菜ちゃん」
呟いた雪菜の背後から声をかけてきたのは、眉難高校三年の湯布院煙と、鬼怒川熱史だった。
「煙ちゃん先輩、熱史先輩!」
「なーにやってんだー?」
湯布院がいつものように、気だるげに口を開く。
「別府先輩の二人に声をかけられて…」
「あいつらが誰かに声かけるなんて珍しーなー」
黒玉湯の向かいの建物を見上げる湯布院。
「なんか、名前で呼んで欲しいとか言われて…」
雪菜は困ったように笑って見せた。
「唐突だな…」
「だよね…」
「あの二人、雪菜ちゃんのこと気に入ったんじゃない?」
怪訝な顔をする二人を見て、鬼怒川が口を開く。
「えぇ?!」
声をそろえて驚く湯布院と雪菜。
「…そんなに驚かなくても…」
鬼怒川が少し呆れて笑う。
「あいつらが、こいつを、ねぇ…」
湯布院は雪菜を怪訝な目で見つめる。
「なによ、その目ー」
雪菜は頬を膨らませて湯布院を見上げる。
「まぁまぁ、二人とも…」
いつものことだと思いながら、鬼怒川が間に入る。