【防衛部】BITTER&SWEET CHOCOLAT
第1章 双つ星に魅せられて
『双つ星に魅せられて』
「あ!雪菜ちゃん!ちょうどよかったっす!」
雪菜と呼ばれた少女は、小柄な男の子に呼ばれ足を止めた。
「有基君?どうしたの?」
男の子は『黒玉湯』とかかれた暖簾をくぐって姿を消した。
「呼び止めておいて、何やってるの…」
雪菜は少し呆れた様子で呟いた。
彼の名前は箱根有基。黒玉湯という銭湯の次男坊で、雪菜とは幼馴染の同い年。
天真爛漫という言葉が良く似合う。
建物の中をバタバタと音を立てながら再び姿を見せた有基の両手には、
小さな紙袋が握られていた。
「これこれ!今日渡せてよかったっす!」
「え?なーに?」
手渡された紙袋を小首を傾げて見つめる雪菜。
「今日、ホワイトデーっすよ!こっちはあんちゃん、こっちは俺からっす!」
指を差して説明する有基。
「あーそっか。わざわざありがとう」
雪菜はふわりと微笑んだ。