第6章 暗部養成部門「根」
「ここに来たってことは、楓は結局根に入る事にしたんだ?」
サイは一人で私を待ってくれていた。
「うん。サイ、さっきの墨で描かれた鳥は?字に変わったからびっくりしたよ!なんていう術なの?」
「鳥獣戯画だよ。描いたものが具現化されるんだ。」
スラスラと何かを描くとサイは実際に見せてくれた
「わぁ!可愛い!小鳥がたくさん!」
「楓はいつも楽しそうだね。」
そう言ってサイの投げた手裏剣は1つの弧を描き見事に全ての小鳥に当てた。
「わぁぁ!?!ちょっと!?これ墨に戻るの!?服に付いちゃったじゃん!?」
小鳥たちの下ではしゃいでいた私は黒い雨の下墨だらけになってしまった。
「楓は?君の忍術も見せて欲しい」
人を墨だらけにしておいてサイは無表情でそう私に聞いてくる
「そんな大したものじゃないけど…うーん、どこかいいところがあるかな?」
枯れた花を見つけ立ち止まった
「草遁…草花再生」
小さな声で呟けば
枯れた小さな花が満開に咲いた
あまりに小さな変化で恥ずかしくなる。
「なんか…恥ずかしいなぁ、ちっぽけだって思ったでしょ…?」
サイは黙ったまま咲いた花を見つめている
「…サイ?」
「え?…あぁ、ごめん。少し驚いてたんだ。楓、この花…完全に枯れていたよね?」
「え?うん??」
質問の意図がわからず首をかしげる
「つまり、楓は……命を再生したんだよね?」
「そんなそんな!大袈裟だよ!それにこれ、全然戦闘に使えないし!テンゾウお兄ちゃんが教えてくれたんだ。つい最近できるようになってね。まだまだ練習中だから戦闘に使うには改良が必要かな?」
大袈裟だけれど無表情なサイが驚いてくれた事に少し嬉しくなる
「テンゾウお兄ちゃん…?楓は兄弟がいるんだね」
「あー!違うよ!家族のような人だと…思ってるけどね。でも、どうなんだろう、私が勝手に呼んでるだけだから…」
(テンゾウお兄ちゃん、根に行くって相談せずに決めちゃったけど、怒るかな?)
突然の決定に対しテンゾウお兄ちゃんの他のみんなに対しても多少の罪悪感が沸いて少し悲しくなってしまう。