第5章 第七班
カカシ先生の所にいたら先生が休めないと思い、私はそのあと病室を去った。
沢山のことが起きすぎてなんとなく気分が落ち着かず、ぶらぶらと散歩をしてから帰ることにした。
「楓…!!?」
「テンゾウお兄ちゃん…!!!」
突然懐かしい声が聞こえてくると、テンゾウお兄ちゃんが立っていた。
そんなに久しぶりじゃないのに、すごく会ってなかったみたいに、なんだか安堵感を覚える。
「よかった…本当によかった…。ちゃんと無事帰って来たんだね。なんですぐに知らせに来てくれないのさ。」
「ふふ、ごめんごめん。今さっき帰って来たの。色々あったんだけど……何から話せば良いか……」
沢山頑張ったはずで、テンゾウお兄ちゃんに褒めてもらいたかったのに…
思い出すと、あまり自分が役に立ってなかったような気がして来た。
「えっとね…」
「どうした?最初に褒めてーとか言われると思ってたけど、なんだか今日は控えめというか。
大丈夫、楓が行って、よかったんだよ。楓は強くなってるから。」
まるで私の心を見透かしたようにテンゾウお兄ちゃんが言ってくる
「テンゾウお兄ちゃん…でも、私…
言い終わる前にテンゾウお兄ちゃんの香りとともに、優しく抱きしめられていた
「おかえり。無事でよかったよ。本当に。」
カカシ先生も役に立ってるって言ってくれたのに、心のどこかで引っかかっている自分がいる。
テンゾウお兄ちゃんが私を今こう抱きしめてくれるのも、自分がカカシ先生よりも、テンゾウお兄ちゃんよりも、私が下で、小さいからだ。
「テンゾウお兄ちゃんも、本当に…優しいよね。」
仲間はみんな仲間を思って大切にする。
仲間を大事にできなかった、8班を見殺しにした私をみんなが大事にしてくれるのは…
(私が惨めだから…?)
気づかなくて良いことに気づいてしまった気がする。
心臓がばくばくと音をたて始める。
(なんで…なんで気付けなかったんだ…)
楓を守るーーーー
そんなの…私が弱くて…でもみんなは私を見殺しなんかできなくて…
私はただ、皆の優しさに甘えていただけだったんだ。
涙が止めどなく溢れはじめる。
「ごめん、テンゾウお兄ちゃ…帰る…」
半ば無理やりテンゾウお兄ちゃんを引き剥がしたら、彼が何か言うのも聞かずに走った。