第4章 兄
「…テンゾウと、だいぶ仲良くなったみたいだね」
どうしても棘のある言い方になってしまう
少し驚いた顔をした楓は、にっこり笑って
「カカシ先生のおかげだよ、私には家族がいないから…テンゾウお兄ちゃんが本当に家族みたいで。嬉しいんだ。」
(あーーーもー、本当に無理だ)
「そうか、ご馳走さま。ありがとね、ご飯。明日も早いんでしょ?そろそろ帰りなさい」
無理やり話を切った
「え…、あ、うん…わかった。」
明らかに動揺する楓をみて本当に申し訳なくなった
大人げない教師でごめん…
頭ではわかっててもどうしても受け止められない自分がいる
「明日から修行、頑張りなさいね。」
「あ、あの…カカシ先生…」
「ん?どうした?」
「前みたいに、一度だけでいいから……、頭、撫でて欲しい」
「……っ。。」
やめろ
「お願い…わたし……、そうしてもらえたら明日から頑張れるから…」
やめてくれ…
「もうそんな歳でもないでしょ〜?」
いつも通り、自然に、ケラケラと笑ってみせる。
どうかお願いだ、ここで引いてくれ
「歳とか…関係ない、先生に撫でて欲しい」
黙ってくれ…
「ダメダメ、ほら帰った帰った」
「いやだ、カカシせんせっ…
「テンゾウにやってもらえばいいだろ!」
「へっ…」
言ってしまった、
「…ごめん、楓。それじゃあね、」
バタンッ
考えるより先に口に出ていた
醜い俺の心が
話し方も何もかも、楓が好きな俺じゃない。
玄関にしゃがみ込んで、1箇所だけ不自然に綺麗に咲いた花を見て、
俺は声を殺しながら泣いた