第16章 憎しみの渦
「…楓、オレは先生として失格だな。大事なお前の仲間を…救えなくてすまない。」
小さくそう呟くと握っていた彼女の手がオレの手を握り返した。
「…楓?」
「…ごめんね、途中から聞いちゃってた。」
寝ていると思っていた彼女は眉をハの字にしながら無理に笑っていた
「…いや、いいんだ。ごめんな…本当に。でもこの件はオレがしっかり決着をつけるつもりだよ。
お前の仲間の手は絶対に汚させない。オレがあいつの師、楓達の先生としてせめてもの償いに、同行してオレが処理するつもりだ。」
「…先生は……悪くないよ。」
消え入りそうな声でそう自分を励ます彼女に対し、もう自分の後悔の気持ちを隠すことはできなかった。
「いや…オレが救えなかったんだよ。大蛇丸の呪印をうまく封印できなかったのも、あいつがここに残ってくれると油断していたのも、オレなんだ。
楓達が必死にあいつを救おうとするたび、ずっと申し訳なくて仕方なかった。
本当に、ごめんな。」
横になっていた楓はゆっくりと体を起こすと優しくオレを包むように抱きしめた
「…楓?」
「…先生、あの時も魘されてたもんね。昔、私が先生のところに泊まった時に。
オレを選んでくれたのか?って。
あの時からずっとカカシ先生はそういう風に思ってたんだね。…あの時のこと、時間が経って、私ね、気づけたつもりになってた。
でも、今もずっと抱えてたんだね。気づけなくてごめんなさい。」
「…楓、何言って…」
「カカシ先生のせいなんて私もナルトくん達も誰も思ったことないよ。
それとね、私のあの時の答えもずっと変わってない。
選ぶなんて偉そうなことは今もなお言えないけど…カカシ先生が大好きだよ。」