第16章 憎しみの渦
カカシside
何度も殴られた楓の顔はひどく腫れていた
(こんなになるまで耐えて…おそらく笑うだけでも痛いだろうに…)
オレは幼少期に父親をなくした。
父が自決をした。
目の前にいる楓も小さい頃に両親が亡くなっている事を知っている。
同じ境遇にも関わらず、彼女はいつもまっすぐで
素直で、周りの人を心の底から大切に思っている
(オレとは本当に大違いだな)
いつのまにかそんな彼女のまっすぐな愛情に自分もまんまと惹かれてしまっていた
今は無茶をして楓が消えてしまわないか、本当に不安で仕方ない
オレは白くて細い彼女の手を持ち上げて軽く手の甲を自分に寄せる
「…これ以上、本当に心配かけないで。先生、楓が思ってる以上に楓が大好きなんだからね」
彼女は依然小さな寝息を立て、一定のリズムで呼吸をしている
(こんなに素敵な人だから
嫉妬深くてだらしないオレの事、どこまで好きでいてくれるんだろうな…)
いなくなってしまったら、離れてしまったら…
サスケの事もあって尚のことそんなことを考えてしまう。
「どうか、ずっと隣にいてほしい」
そんな事を呟いても彼女には届かないのに
少しでも不安をかき消すためにそう呟いた