第16章 憎しみの渦
目を開けると天井がみえる
消毒液や湿布の特有の香りがすると、虚ろな意識の中でもここが病院だとわかる
「…私……」
横を向くとサイが心配そうに私の顔を覗き込んだ
「…どうしてこんな、なんでそんなに、君はサスケ君を庇うんだ…なんで、こんなに無理したんだ…」
「サイ…もしかして、泣いてる?」
「君のせいだ、君のせいで僕の感情はぐちゃぐちゃだよ」
サイはすごく取り乱していた
「…あの時、あんなに悲しい笑顔をしていたサイが、本当に涙を流す日が来るなんてね」
感情を殺したと言っていた彼が今私のために泣いている、そんな事実が私の心を温かくした
「なんで人が泣いてるのに君は嬉しそうなの?」
少し不機嫌そうに表情を変えるサイをみて申し訳ないと思いつつやはり嬉しく感じてしまう
「ごめんごめん、サイがそんなに感情豊かになったんだって、私のために泣いてくれたことも嬉しくって。…でも、本当に心配かけてごめんなさい」
ぐすっと鼻を啜るとサイが話す
「さっきカカシ先生を鳥獣戯画で呼んだよ。多分すぐくるはず。今楓に必要なのはあの人でしょ?」
「えっ、どうして…
言いかけるとともに病室のドアが勢いよく開いた
「楓…!」
息を切らしながらカカシ先生がやってきた
「カカシ先生…?」
カカシ先生は私の顔を見て一瞬すごく悲しそうな顔をしてからすぐに私を強く抱きしめた
「えっ、ちょ…ちょっと、カカシ先生?」
「本当にすまない…オレが一緒についていかなかったせいだ」
「先生は何も悪くないよ、避けようと思えば避けられたし、私がしたくてした事だから」
人前で抱きしめられるのが恥ずかしくてそっと先生の体から離れる
「…っ……。こんな、顔が腫れて…それ、すごく痛いだろ…」
カカシ先生はわかりやすく狼狽えている
「本当に大丈夫だよ。カカシ先生、ありがとう。サイも、本当にありがとう。」
そう言うとカカシ先生も続けてサイにお礼を言った
口角を上げるとピリッと痛みが走る
きっと私の顔は見れたものじゃないのだろう
「サイ、ありがとう。こいつ本当にすぐ無理するから…」
「いえ、僕は楓の親友としてできる事をしただけですから」
カカシ先生とサイが話している