第12章 草の壁
ゆっくりと楓に近づき、自然に楓の肩に乗ったサイの手を振り解き
オレは楓を自分の方に抱き寄せる
「ま、あとは先生に任せてよ。」
こういう時まで先生という立場を使う自分が正直醜い。しかし目の前で2人が仲良くするのは見ていられなかった
「……嫉妬、ですか?」
「…えっ?」
サイが真剣な顔で自分を見る
これ以上見られれば自分の心が見透かされそうで
咄嗟に目線を逸らしては
なんのことだ?とはぐらかす
「嫉妬でもいいです。でも、楓の事を泣かせたら第七班の担当上忍だったとしても僕は許しません」
「……はは、なんかそれ、前にも同じような事言われたな。」
テンゾウが家に押しかけてきた事を思い出す
ふと視線を落とすと
いつもはオレの横でにこにこ笑っていた楓が
まるで助けてと言っているような顔でサイを見ていた
(…どうなっているんだ?)
「みんな!帰るよ!!!」
イノの声でみんながそちらに振り向き歩く
楓はするっと自分から離れるとサイの横で何か話しながら2人で歩いて行った
ズキズキと胸が痛む
「…ははっ、肋骨折れたかな」
心の痛みに言い訳をつけながら木の葉の里に帰った。