第11章 君のくれた笑顔を君に
しばらく歩いて楓の家に着くと
家のドアの前で
ずっと黙っていた楓が振り返り、口を開いた
「私…サイのこと……好きになれるのかな?
……その、異性として…。
凄くドキドキするのは、既にサイの事を意識してるからなんだと思う。
でも……カカシ先生のことを考えると涙が止まらない。大好きで、大好きで仕方ない。
彼が、他の誰かを好きなのが、凄く辛い。
こんな私が、サイの好意を受け取っていいの?
どうしてサイは、辛くないの…?」
さっきと同じような質問を投げると楓は僕の両手を掴んで、教えて、と頼んできた。
「…好きだから。本当にそれだけだよ。
楓が僕を好きだったら、凄く嬉しいし、そんな事を想像するだけで幸せだけど、それだけじゃなくて。
泣いてる楓を見るのが辛すぎる。
何度も言っている通り、笑って欲しい。本当に、それだけなんだよ。
ねぇ、楓、君はちゃんと幸せになっていいんだよ。
僕は楓を諦めてないけど
でも今もこれからもきっと、楓が他の人を好きなままでも、楓が笑ってたら幸せだ」
本音だった。僕に笑顔をくれた彼女が幸せだったら、彼女が笑顔だったら……
僕はそれだけで十分だった。
「サイは、不幸にならないの…?」
「うん。楓が笑ってくれたら、ね。」
「優しすぎるよ、サイは。」
「楓が優しいからそう思うんだよ。」
「サイも、幸せになって欲しいの。
私頑張って立ち直るから。
幸せになって欲しいの。
ねぇ、私が今、サイにできること
何かないかな。」
(こうやって拒絶もせず話してくれているだけで、僕は十分だけど…)
そんなことを考えていると彼女は「サイ、目を瞑って」と言った
「…ん。」
何をされるのかわからないまま、目を閉じていると
少し彼女は少し鼻を啜ってから
「目を開けて」
といった