第11章 君のくれた笑顔を君に
「楓をこんなに泣かせたのは…僕…?」
彼女は僕の言葉に一瞬狼狽えると、これでもかと言うくらい必死に首を振って違うと言った
「ただ…自分が許せないの。
カカシ先生を諦めるためにサイを利用しているみたいで、
サイを見るとすごくドキドキする、あの日のことを思い出す。
でも、それはあの日、私は初めてキスをしたからなんだと思う…。
こうやって流されて、応えられるかわからない貴方の気持ちに甘えることが、許せないの。」
ポロポロと涙をこぼしながら、彼女の手を握った僕の手を彼女はもう片方の手で引き離そうとした
もう耐えられなかった
笑って欲しいのは自分の方だった
カカシ先生は正直彼女のことが好きなんじゃないかと思う時がある
だから、もしそれが本当で、2人が結ばれたら…
そんなことを考えることもあった
でも、その時彼女が笑っているならいい
ただ今、自分の前で泣いている彼女を見続ける事だけがずっと耐えられなかった
空いた方の手で彼女の頬についた涙を拭う
僕達はいつのまにか歩みを止め、人が行き交う道で2人立ち止まっていた。
「……楓」
ごく自然な動きだった
彼女の顔に顔をゆっくり近づけると
彼女はぎゅっと目を瞑った
彼女の顎に手を添えて少し角度を上げ、
自分はゆっくりと彼女の唇に自分の唇を重ねた
時間が止まったようだった
ほんの数秒間の出来事にどくどくと少しずつ鼓動が早まる感覚が襲う
「……好きだ。楓、ごめん。色々理由はあるけど、感情は理論じゃないんだと思う。
僕は楓が僕に思ったように、ただ、ただ楓に笑って欲しいだけなんだ。」
しばらく僕の目を見つめると彼女は僕の名前を呟いた
「ごめんね…嫌……だった…よね?」
嫌だったら抵抗できるくらい、
ごく自然に僕達は動いていた
でも彼女は混乱していたから、こうしたんじゃないかと
一抹の不安がよぎり、どうしても聞いてしまった
「……嫌…じゃなかったよ。ドキドキして、何が何だかわからないけど…でも、私……嫌じゃなかったから、逃げなかったんだと思う…」
彼女は戸惑いながらも下を向いてぼそぼそと話してくれた
そんなことを言われるともっと先に進みたくなる自分を必死に抑えて、そっか…良かった。と言った。