第11章 君のくれた笑顔を君に
サイside
サクラたちの横に泣き腫らした目の楓を見た時は心臓が止まるかと思った
同時に自分でも驚くほどの怒りが湧いた
楓は大丈夫だと言うけど、彼女が無理をする癖があることくらい、
根の話を聞いた時から知っていた。
しゅんと小さくなった彼女の肩を
自分は離せずにいた
「サイ…怒ってる?」
潤んだ目で自分を見る楓に不覚にもドキッとさせられる
怒ってなんかない。
自分でも焦るほど、ただ楓が心配だった。
彼女はたまに消えそうな笑顔で笑う時がある
それがとてもつらくて、守りたいと思う。
でも、冷静になった自分は
彼女をこうさせたのは自分なんじゃないかと思い始めていた。
「全く…怒ってない。寧ろ、早とちりしてごめん…。後でもう一度サクラたちには謝っておくよ。
あの時は楓の顔を見て感情的になってしまって、彼女たちが泣かせたのかと思ったんだ」
彼女は少しだけ不安そうに僕を見つめ
目が合うと視線を下に移動し小さな声で話し始めた
「サイ……。ありがとう。私は、私みたいな人間がサクラちゃんたちみたいに優しいみんなと一緒にいていいのかわからなかったんだ。
ただ私は守られるだけ。仲間1人助けられないくせに。」
下を向いている彼女の表情は見えないが
ポロポロと雫が溢れていることだけはわかった
「あの時、いつも優しくて静かなサイがあそこまで怒ってくれて、本当に大切に思ってくれてるんだなって感じたの。でも、私はサイの優しさに甘えてもいいのかな…私はサイに何もできない。
カカシ先生が好きなくせにこうやって今も曖昧にやり過ごしてサイを傷つけてる。
サイのこと、大好きなんだ。友達になろうって言ったあの日から、あなたから私は目が離せなかった。
ずっと泣いてる笑みを見せるあなたに、私はずっと笑って欲しくてたまらなかった。
でも、それはあなたがすごく大切な友達だからなの。気持ちに応えられないのに、どうしてこんなに私に優しくしてくれるの?」
彼女は俯いたまま僕に言葉を投げる
ずっと悩ませていたのかもしれない。
肩にかけた手を離して優しく彼女の細い腕に手を伸ばし、そのまま手のひらまで自分の手を移動すると
小さな手のひらを包むように握った