第10章 交差する想い
やや自分よりひんやりとした唇がそっと離れたあと、口を開いたのはサイだった
「っ、ごめん…。楓があまりにも可愛くて…つい。」
恥ずかしそうに目を逸らすとサイはまだ呆然としている私の頭を優しく撫でて、服着てくるよと立ち上がった
「…き…キス…された……?」
離れて行くサイを見ながら、何が起きたのか少しずつ実感して行く
(えっえっ!さ、サイと、キスしちゃったの!!?!)
私は自分の唇にそっと触れて今にも火が出そうな頬を、ひんやりした自分の手の甲で冷やす
「お待たせ」
心の整理ができていないうちにサイが戻ってきて、また私の隣に座る
「…し、私服のサイ、はじめてみたかも。」
なんとか会話を探してそう呟く
「そうだったかな。いつもと変わらないよ。」
他愛のない話がこんなに気まずいのははじめてだった
「あの…本当にごめん…。するつもりなかったんだ。」
ばつが悪そうにサイはそう言って、温かい飲み物が入ったマグカップを私に渡してくれる
「その…私もびっくりしちゃって……こ、こういうのはじめてで…その…
こ、告白…ありがとう。」
それだけ言うと恥ずかしさが増してしまって、私はコップの中の飲み物を一気に飲もうとした
「あつっ!!!」
思わずマグカップを落としそうになる。
「…ぷっ…はは…楓、焦りすぎだよ…ははっ」
「なっ!サイのせいでしょ!」
ケラケラとサイは私を見て笑う
「ごめんごめん。でも、好きなのは事実だよ。順番が逆になってしまって申し訳ないけど、僕と付き合ってほしいと思ってる。」
目を細めながら優しく笑ってサイは私を見つめていた
「わ…わた…私、失恋したばっかりで…」
「うん、知ってるよ。泣き出した時に、わかってた。」
「うん…私…まだカカシ先生が…すきなの…」
「うん、それも知ってる。」
「だから…
だから、付き合えない。そう言おうとした
「僕は楓が辛くなったときのはけ口でいいんだ。
楓の笑ってる姿を、隣で見られれば。届かなくても十分だよ。
勿論、好きになってもらえた方が、嬉しいけどね。」
そう言ってサイはコップを机に置く