第10章 交差する想い
サクサクと土や草をふむ音が響く。
ポツリ、ポツリと、思い出を紡ぐように、私は昔の話をサイにしていた。
「昔ね、猫を捕まえようとして、マンホールの中に入ったら出られなくなったことがあって」
サイはうんうん、と頷きながら静かに耳を傾けてくれている
「それで、カカシ先生が助けに来てくれたの。すごく安心して、あの時のことすごく鮮明に覚えてる。」
「そっか、無事出てこれてよかったよ。」
優しく聞いて、返してくれる、その会話のテンポになんだか安心して、ついつい沢山話をしてしまう。
「それでね…私…その時泣いてて…。カカシ先生が優しく頭を撫でてくれて…
サイがうん?っと頷きながら私の様子を伺う
(あっ、あれ…)
「それで…私……っ。
私ねっ…
気づいたら涙がポロポロ出て、なにを話したかったのかもわからなくなってしまっていた。
袖を手のひらで掴んで伸ばして、涙を拭くけれど、
一度ではじめた涙は簡単には止まらず、自分はただサイと話したいだけなのに、
うまく喋れない
「楓…」
涙で歪んで、彼の表情はうまく見れず、必死に涙をなくそうとまた目を擦ると、あの時のカカシ先生のように優しく、サイが私を抱きしめて、背中を撫でてくれた
「うっうぅっ…」
しばらく私たちはそのまま立っていて
その間、私たちの横を誰かが通ったかもしれないけれど、サイは泣き止むまでずっとそうしてくれていた。
「落ち着いた?」
すっかりサイの服はびしょびしょになってしまい、申し訳ない気持ちで俯く
「サイ…ごめんなさい…」
「楓は本当に…泣き虫だよね」
眉をハの字にしながらサイはくすっと笑った
「だって…」
良い言い訳も見つからず、だって…とだけ言って黙っていると、サイは私の手を取って歩き出だした
「少し落ち着くまで話を聞くよ。何もしないから、僕の家でいい?ここから近いんだ。僕の服もびしょびしょだし、温かい飲み物でも淹れるよ。」