第3章 変化
気づけば私はドアの前にいた。
丸いボタンを押し、
ピンポーン
心情とは裏腹に明るいチャイムが鳴る。
程なくしてパタパタパタッと中から足音が聞こえる
ガチャ…
「…楓……?」
ドアが開くと会いたかった人がそこにいた
彼は一瞬驚いた顔をして、すぐに察してくれたのか優しい顔で中に手招きをしてくれた。
中に入ると、ガチャリとドアが閉まった
「カカシ先生…ごめんなさい…私…急にっ…」
ふわりと懐かしい香りと共に視界が暗くなる
(私、今…抱きしめられてる……)
やっと止まったはずの涙が再び溢れ始めた
(先生の服が…濡れちゃう…)
そっと手を先生の胸に当て、先生との距離を取ろうと力をいれると、
先生は先程より強い力で私を抱きしめ
「…もう少し、このまま。」
いつもより少し低いトーンで呟いた。
しばらくしてようやく落ち着いたら、
先生はそっと手を私の肩においた
「美味しいものでも食べよっか…?先生が作ってあげるよ」
いつもの調子でにっこり笑った先生の顔を見て、こくりと頷いた。
「…おいしい……」
ほかほかの白いごはんに、秋刀魚の塩焼き、茄子のお味噌汁。
なんでだろう。1人で食べる時よりも何倍も何倍も美味しくて、また涙が出そうになる。
「あーこらこら。もう泣かないの。楓、これあげるから!」
お味噌汁の茄子をこちらに差し出してくる先生
「いや、こっちにもあるし…」
クスッと笑う
「そっかぁ〜食べないかぁ〜この茄子は特別なのに、勿体無いねぇ〜君。」
わざとしょげたフリをして先生が箸を引っ込めようとする
(パクっ!)
「えへへ、特別な茄子も〜らい!」
「ッ…!!」
目を見開いて驚く先生は耳まで赤くしている。
「お前なぁ…」
ふふふっとどちらからともなく笑い始める。
(先生、ありがとう。)
あっという間に完食をした。