第2章 迷い猫
楓side
「カカシ先生……、お風呂まで、ありがとう。」
春とはいえど夜は冷えるもので、久しぶりに温かい湯船に浸かって、心までポカポカになった。
(ひとりじゃお風呂わざわざ焚かないからなぁ〜)
「お?楓、もう出たのか。ゆっくりできた?」
「うん、いつも家ではシャワーだけだったから…すごく気持ちよかった!」
「ここの風呂でよければいつでも入りに来い」
また、頭にポンッとあたたかい手が乗っかる
あぁ、本当に先生は……
無意識でこれをやっているのだろうか、心臓に悪い…
頬が赤くなるのが自分でもわかる。
(風呂上がりでよかった…)
カチカチと鳴る時計はそろそろ11の刻をさすところだった。
(居心地よすぎて…!もうこんな時間!?)
「カカシ先生、あの、今日は本当にありがとう。私、ここにいるとずっとあったかくって。もうこんな遅い時間だった!
明日早いからもう帰るね、先生、また明日…
「え?ちょちょちょ、楓、え?何、帰るの?なんで?」
素っ頓狂な声を出して先生が腕を引っ張る
「え?何って、帰…
「帰らないでいい」
喋り終わる前に先生がピシャリと言い、
真面目な目で見つめてくる
しばらく見つめていると、先生がゆっくりと話し始めた
「俺はね、今日は楓とずっと一緒にいたいの。ダメ?」
先生……そんな…
(私、先生の事、好きなのに…)
でも、その好意が嬉しくて、断れるわけもなく、
「先生のロリコン〜、いいですよ〜。」
と言いながら先生の頭をポンポンっと撫でた。
(いつもの、お返しだよっ)
もっと素直になれたら、可愛い生徒になれるのに。
そしたら、もしかしたら、
先生の特別になれるのに…
先生が私に優しくするたび、自分はここにいていいのだと思える
でも…
もし私が第7班でなかったら…?
そしたら、私にこうやって、同じように……優しくしてくれるの?
夜、先生の隣で眠る。
寝息をたてる先生の横で、
小さな声で言ったんだ
何度も言ってるのに、一度も伝わらない言葉
近くて遠いから、
深くて浅い言葉になってしまう
「先生、大好き。」
何から出たかわからない涙が、頬をつたった。