第3章 彩斗様 鳴上嵐
お昼になると嵐が来るので、私は逃げるように食堂へ移動した。
「お姉様!」
のは、ラッキーだった。可愛い後輩の司くん。彼と話すと心が和む。
「司くんも学食食べるんだ?」
「はい」
上品にご飯を食べる司くん。
可愛い。
なぜ私の周りにはこんなにも“可愛い”が溢れているのだろうか。
「…………………可愛いくなりたい…」
「え?」
ポツリと呟くと聞こえてしまったようで、彼は聞き返した。
「かーわーいーくーなーりーたーいーでーすー」
「…………………えっと…」
突然のことに当然戸惑う。
うん、私だって先輩が可愛くなりたいとか言い出したらそんな反応する。
「可愛くなりたいとかそんな次元じゃない。可愛くなる努力をするやる気がほしい。私から全部奪っていくあいつが憎い。」
「な、何の話でしょうか……?危ない匂いがします……!!」
嵐は可愛い。可愛いから、しょうがない。
隣にいる私がダメなのはしょうがない。誰だって比べてしまえば嵐が可愛い。
そんなことで諦めてしまう私も私で大馬鹿者だ。
「………………ただの八つ当たりだよ……」
所詮、私がふてくされてるだけなんだ。
全てを嵐のせいにして、私は私を諦めてる。
「大丈夫ですか……?ッ何か悩みがあるならこの司に!」
司くんが“頼れますよ!頼れる男ですよ!”と言った感じで身を乗り出す私は少し吹き出して、首を横に振った。
馬鹿馬鹿しいから、頼らない。
私もそろそろ、私と向き合うべきなんだろうけど。