第2章 マリー様 七種茨
『もう告白したんすから、ガツガツいけばいいと思いますよ~』
手を貸すと言ったジュンが、あの時言っていた。
『そもそも、恋愛面でアタックしてないのに勝算があるわけないっすよ』
ごもっともだと思った。
でも何だか、それはとっても気持ち悪いことだ。俺にとって恋は気持ち悪いものなんだ。
気持ち悪いけど、を好きな気持ちは本当なんだと思う。
アレルギーというのか……届かないところが痒い感じがする。
要はきっと、照れてるだけだろう。
それがとてつもなく気持ち悪い。
御守り販売所の離れたところに、絵馬の販売所があった。試しに二枚買った。
一枚にはアイドルとしての目標を書いて写真に撮り、SNSにあげた。
二枚目には………
『長年の片想いが報われますように』
何だか、安っぽい恋愛小説みたいだ。
そんな安っぽいものが、今の俺には手に入らないのだが。
一番高いところにそれをくくりつけて、柄にもなく祈った。
お賽銭箱に小銭を投げて鈴を鳴らして手を合わせた後も同じことを願った。
気づけばのことばかりだ。
本当に自分が気持ち悪い。
『ごめん、茨くん』
SSの日、楽屋での彼女でさえ思い出してしまう。
アンコール中にtrickstarに夢中の彼女が許せなかった。しょうもない嫉妬心で気が狂いそうだった。………いや、もうとっくの昔に狂ってたんだろう。
『皆のプロデューサーだから』
そう言われて、スッキリするはずだった。長年の気持ち悪さから解放されるはずだった。
なのに。
それじゃ納得できない自分がいる。
あんずのあの言葉は、プロデューサーとしての言葉だ。お前の本心はどうなのか………。それが知りたい。
俺はプロデューサーに恋をしたんじゃない。に恋をしたんだ。
アイドルとしてではなく七種茨としてお前に告白した俺は、納得できないんだ。
この俺が素直に自分の感情を口にしたんだ。
お前もそうしてくれないと、困るんだよ。