第2章 マリー様 七種茨
………は?
いや、……………………は?
「明けましておめでとうございます!」
…………………………………………は?
俺の目には今、確かに幼なじみが映っている。
巫女装束を着て。
「…………………………………は?」
心の声が口から飛び出した。
「あのね、バイトしてるの。茨くんこんなところまで来るんだね。ビックリしちゃった。」
いやビックリしちゃったのは俺の方………ッ!!
最悪だ、何でこんなことに!?おい神様、やっぱりお前この世に存在してないのか。さっきのおみくじの大吉はなんだったんだよ。大吉は凶に還るって、こういうことを言うのかよ!?
一応アイドルで顔が売れているから人目を避けて、遠いところの神社に来て日付も元旦からずらしたのに。
初詣なんて例年はしないのに、SNSのネタにしようと思ってそのためにわざわざ遠出までした結果がこれなのか。
くそ、SNSなんて今日でやめてやる。
「いらっしゃいませ~。おみくじですか?お守りですか?」
俺の心内など知らず勝手に接客をしだした。ていうか日本語変じゃないか。言われたとおりにやってるのかもしれないが、そんなマニュアル今すぐ捨てた方が良い。
「いや……おみくじはさっきやりましたので。」
「じゃあお守りですね。あ、これとかどうですか?」
は数あるお守りから朱色のお守りを手にのせて見せてきた。
金色の糸で表に『御守』、裏返してみると『商売繁盛』と刺繍されていた。
「…………」
それを受け取ったあと、もう一つを手に取った。
「ではこれもお願いします!」
桃色の御守り。
それを見たの笑顔に一瞬影が落ちた。
『恋愛成就』
はそれを受け取り、丁寧に袋につめた。会計を終えたあとに渡そうと手を伸ばした。
「わ、…っ!」
軽い悲鳴が聞こえた。
俺は彼女の伸ばされた手をつかみ、一気に自分の方へ引き寄せた。
近づいたのもとへ身をのりだし、耳元で囁いた。
「もう、我慢はしませんよ」
そう言って俺は彼女の手を離した。
「バイトが終わるまで待ってます」
離れていくポカンとした彼女にそう勝手に言い残し、俺はその場を離れていった。