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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第8章 【家康・後編】※R18


「どうぞ…家康様から…」
家康は促されると、突然、畳に両の拳をつき、竜昌に頭を下げた。
「さっきは、すまなかった」
「えっ?」
「女が邪魔だなんて、言うつもりはなかった」
「それは…」
「アンタのことは邪魔だなんて思ったことは一度たりともない。むしろ…(アンタと一緒に…」
「わかっています。家康様は、睦姫さまのことを思って、そうおっしゃったのですよね?」
竜昌は、家康の言葉をさえぎるようにそう言った。
「えっ」
「姫様に、戦の危害が及ばないようにと…」
「…」
「家康様もお人が悪い。素直にそうお言いになれば、きっと睦姫様だってわかってくださるのに。
最後の気力を振り絞って、竜昌はニッコリと家康に微笑みかけた。
「退くことが最良の策であることもございます。いずれ睦姫様も武家の姫として、お気づきになられるでしょう」
睦姫に対して言ったつもりが、まるで自分へ言い聞かせているようだな、と竜昌は思った。退くことが…身を引くことが、最良の策であると。
家康は顔をあげ、切なそうな眼差しで竜昌を見た。
竜昌は視線を合わすことができず、ゆらりと揺れる行燈の火を、見るともなく眺めながら言った。
「駿府の皆様にはお世話になり、御礼申し上げます。大変楽しゅうございました。できれば、皆様と戦場で共に駆けとうございました」
「うん…」
「それから…本多様の件も。私にはもったいないほどのお話、まことに恐れ多いことでございます」
「断る…んでしょ?」
「…もし私のような…不束者でもよろしいとおっしゃて頂けるのなら…お受けしようかと…」
「は!?本気!?」
そう家康が問うと、竜昌は無言でこくりと頷いた。
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