第1章 【女城主編】※共通ルート
次の瞬間、竜昌は腰の刀をすらりと抜くと、手を返して刃を自らの首にあてた。
「光秀!」
信長が短く叫ぶのと、光秀の構えた火縄銃が火を噴くのがほぼ同時だった。
一発の乾いた銃声と、弾丸が鉄鎧に当たったような固い金属音が城下に響きわたった。
項垂れていた秋津の領民たちが驚き 顔を上げると、その視界には ぐらりと重心を失って城門から落ちていく竜昌の姿が映った。
「殿ー!!」
「竜昌様ー!!」
領民たちの、胸から絞り出すような悲鳴が沸き上がる。思わず駆け寄ろうとする民もいたが、織田軍の兵に槍で制されて立ちすくむ。
「殿!!」
「姫様ー!!」
その悲鳴の中にいくつか「姫」と呼ぶ声が聞こえたのを信長達は聞き逃さなかった。
「落ち着け、死んではおらん。光秀、つれてこい」
「承知」
光秀は馬を進めて、城門の下で倒れている竜昌に駆け寄った。弾丸は兜の前立てにあたったはずだ。城門の屋根までは高さ二間ほど。鎧を着ているのであれば大した衝撃ではないだろう。
横にひざまずき、息があるのを確認する。やはり気を失っているだけのようだ。
兜の緒を緩め、首をささえながら兜をゆっくりと脱がすと竜昌の素顔が現れた。
「ん…」
光秀はその琥珀色の眼を細めた。
細い顎に、つるりとした肌、豊かな黒髪。
そこにいたのは、まごうことなき『女城主』の姿だった。
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