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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第5章 【家康・前編】


蕩けそうな頬を押さえながら、舞がひときわ大きな感嘆の声を上げる。
「だろ?今回は料理のしがいがあったぜ」
「さすが政宗様ですね」
「お前に鯛の味がわかるとはな三成」
「そういう光秀様こそ、全部のせ丼のお味はいかがですか」
「全部鯛だからな。何の問題もない」
鯛めしの上にすべての料理を乗せ、お茶を回しかけてお茶漬けにし、黙々と掻き込む光秀。
「光秀さんそれひどーい。けど今回のに限っては美味しそう…」
うらやましそうにそれを眺める舞。
「こら、舞。お行儀悪いぞ」
「はーい」
その時、今まで黙って料理を食べていた家康が、舞の方を向き、指でトントンと自分の頬を突いた。
「舞、ご飯粒、ついてる」
「ひゃっ」
慌てて顔をまさぐる舞。その姿を見守る家康の眼は、あくまで優しい。
『家康様、ああいうお顔もなさるんだ…』
鯛めしを一口ずつ食べていた竜昌は、ちらりと家康の表情を見た。とたんに、口の中の鯛めしが、パサパサの粟(あわ)でも食べているかのように、味気なくなる。
『あれ…』
だがそれも一瞬のことで、次の一口は、元のようにふっくらと炊き上げられ出汁のきいた鯛めしに戻っていた。
「どうした竜昌、口に合わなかったか?」
政宗が、冴えない顔をしている竜昌を心配そうにのぞき込んだ。
竜昌は慌てて笑顔を取り繕う。
「いえ、大変美味しいです。おかわり、してもいいですか?」
「おう、まだあるからたんと食え。そんではやく怪我治して、また剣の稽古しようぜ」
「大丈夫ですよ、明日からでも」
「…駄目」
突然、家康が横から口を挟んだ。
「あんたはせめて腫れがひくまで、安静にしてて」
家康の目はさきほどの舞を見る目とは違い、冷ややかなほど真剣だった。
「はい…」
竜昌は先ほど治療してもらった二の腕をちらりと見やった。傷は確かに熱を持って、少しだけ腫れている。いつもの竜昌であればこの程度は気にせずに剣をふるうが、せっかくの治療を無下にするわけにもいかず、大人しく従うことにした。
「ま、我らが御典医様がそうおっしゃるなら、仕方ない」
しゅんとした竜昌を励ますように、政宗が笑いかけた。
「じゃあ家康、お前が稽古に付き合ってく…『お断りします』

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