第19章 【光秀編】#2 月夜の兔は何見て跳ねる
舞様にそう説明しながら、私はなんとなくこの唄をつくった馬子の気持ちが分かるような気がした。
身の程知らず…か。
そうこうしているうちに、私たちはいつの間にか練習場に着いた。
種子島に触ったことすらない舞様には、まず種子島の持ち方から、光秀様の指導が始まった。
私は二人の邪魔にならないように少し離れて、前回 光秀様に教わった伏せ撃ちの練習をした。敵に見つからないように地面に伏せ、弾込めからやるのはなかなかに難しい。しかしこうしていれば、二人の姿を見ずに済む。
しかし、どうしても背後の二人に意識を取られてしまい、なかなか集中することができなかった。火薬をこぼしたり、弾丸を落としたり、さんざんな出来栄えだ。
やがて背後で、パンッという発砲音とともに「キャッ」という可愛らしい悲鳴が聞こえた。
思わず振り返ると、光秀様の手の中には、たった今 弾を撃ったばかりの種子島と、両手で耳を押さえながら光秀様の胸に顔を埋めている舞様がいた。
胸がぐっと締め付けられるように痛んだ。
「…」
わかっていたとは言え、やはり実際に目にすると、その光景は思いのほか私の胸をえぐった。
「ふぇ~ん怖かったよ~」
「これしきで音を上げているようでは、自分の身は守れんぞ」
「だってえ~」
これ以上二人の会話が耳に入らないように顔を逸らすと、もう一度地面に伏せ、自分の的に狙いを定めた。
しかし、ズキズキと疼く胸がなかなか収まらず、銃口が全く定まらない。
「竜昌、前回も言ったろう。もう少し顎を引け」
突然、光秀様は離れたところから私に指示を出した。
「は、…申し訳ありません!」
「体の軸をまっすぐに…そうだ」
私の存在も、きちんと目に入れて下さっていることが嬉しくて、思わず頬が緩みそうになる。その光秀様の腕の中に舞様がいることを、今は忘れたい。忘れ…たい…けど。
私は頭の中から舞様の存在を必死に追いやり、前回の教えを思い出しながら体勢を整えると、引き金を引いた。
バンッ!
弾は見事に命中し、私はやっと胸のつかえがとれ、ホッと息を吐いた。
「よくやった」
「今の当たったの?」
「ああ」
「わぁ~りんちゃんすごいね!」