第18章 【光秀編】#1 これでは、まるで
その素早さもさることながら、正確無比な弾道を、私はただただ感心してぼうっと見惚れていた。
「お前は昨日、銃は戦を変えると言ったな」
「は、はい」
十発目の弾も危なげなく命中させた光秀様が、やっと構えを解き、こちらを見た。キラリと光るその琥珀色の目は真剣そのものだ。
「その通りだ。しかし修練でこれだけ撃てても、戦の時に狙った敵を仕留めることができるかどうかは、はっきり言って時の運だ」
「はい…」
「相手は恐ろしい勢いで攻めてくる。一発目を外したら、二発目を撃つ余裕はない」
「は…」
「焦りが狙いを狂わせ、恐れが指を強張らせる。この種子島を手足のように使い、戦に勝つには、強い精神が必要だ」
「はいっ!」
光秀様はまるで私を脅かすようにその目に力を込めたあと、ふっとその目を弛めた。琥珀色の眼が、わずかに弧を描く。
「その一環として、せいぜい男にも慣れておくことだな」
「~~~~」
揶揄われているのだろうが、笑ってごまかすこともできずに、私は唇にぎゅっと力を入れて口をつぐんだ。
冗談なのか本気なのか、このお方の言葉は底知れぬ所がある。
光秀様は撃ち終わった種子島を肩に担ぐと、改めて私のほうに向きなおった。辺りにたちこめる硝煙の匂いなどまるで感じさせない、清らかな白銀の髪がさらりと風に揺れる。
「お前はなかなか見どころがある。また気が向いたら教えてやろう」
「まっ!まことでございますか!?」
今回の手ほどきは、てっきり光秀様の一度限りのお戯れかと思いこんでいた私は、その言葉に声が跳ねるのを抑えられなかった。
「この修練場も好きに使っていい。来る前に俺の屋敷に寄って、家の者にそう伝えろ」
「は、はいっ」
「その種子島も、お前にやろう」
「へっ!?!?」
「なんだ、不満か?」
「い、いえ、滅相もない!有難き幸せ!」
私は慌てて光秀様の種子島を胸に抱いて平伏した。わずかに冷たい銃身が頬に触れる。その冷たさが、光秀様のひんやりとした指先を思い出させ、胸の真ん中がじんと痺れるような感じがしたが、それは決して不快ではなかった。