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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第18章 【光秀編】#1 これでは、まるで


私は触れている部分が熱を持ったのが光秀様にバレませんようにと、頭の片隅で必死に天に祈っていた。

「片目で狙え。もう少し下だ」

耳元で低く静かな光秀様の声がする。生暖かい微かな吐息が、私の耳の産毛を揺らした。
ぞくりと全身が総毛立つ。膝がガクガクと震え出し、私は狙いを定めるどころではなくなった。

「そのまま───」

光秀様は、震える私の身体をぎゅっと押さえ込むように腕に力を入れて、引き金にかけられた私の人差し指に、自らの長い人差し指を絡ませた。
指先から全身に、痛いような、くすぐったいような痺れが走る。

『ンッ…』

バンッ

乾いた破裂音で、私は瞬時に我にかえった。
弾丸は、的のど真ん中を見事に撃ち抜いていた。

「あ…」

身体を覆っていた光秀様の体温が離れていく。
光秀様の支えを失い、私は膝に力が入らぬまま、その場にへたりこんでしまった。
呆然と的を見つめる私の頭上から、光秀さまの楽しそうな笑い声が降ってきた。

「お前は鉄砲よりも、男に慣れるほうが先決だな」

カッと顔が熱くなる。
私はもう十九。子供と言える年齢ではない。ではないが、確かに男に慣れてはいない。
童の頃は、男児に混じって、泥んこになりながら戦ごっこに明け暮れていた。切り傷や痣などは日常茶飯事だった。
しかしいつのころからか、次期城主に任命された私に、気軽に触れる者はいなくなった。
病がちだった父でさえ、最後に幼い私の頭を撫でたのは、いつのことだったか。やつれて細くなった父の白い指の感触は、とっくに思い出せなくなっていた。

「まあ、“城主”に軽々しく触れる家臣もそういないだろう。慣れていないのも無理はない」

まさか心を読まれたのかと思って、胸がドキリとした。
見上げると、光秀様はこちらを見もせず、担いでいた種子島を肩から下ろした。

「見ていろ」

光秀様はそう言うと、小さな筒のような物を取り出し、その中身を銃口からさっと流し込んで槊杖で突き固め、流れるような動作で種子島を構えた。

『早い!』

気が付いたときには、銃口から白い硝煙とともに弾丸が打ち出され、それはまるで吸い込まれるように的に命中した。

「わぁ…」

思わず感嘆の声を上げる。

「弾は見えているようだな」

光秀様は間髪をいれずに次々と弾を込め、まるで息をするように自然な動作で、次々と的を撃ち抜いていった。
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