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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第18章 【光秀編】#1 これでは、まるで


光秀様と私は城下町を抜け、橋をわたり、ようやく田植えが始まったばかりの青空を映す田を抜け、森にさしかかったところで馬を止めた。

「ここは当家の修練場だ」
「すごい…」

そこには、森の木をを切り開いた中に、いくつかの的が置いてある広場があった。的にはいくつも弾丸の痕があり、光秀様の家中の方も足繁くここに通われていることが伺えた。

「撃ち方は知っているな?」
「はいっ」
「まずは一発撃ってみろ」

光秀様に弾丸と火薬を渡される。
私は手順を思い出しながら、火薬を弾を砲身に詰め、火縄に火をつけた。光秀様がその琥珀色の瞳でじっと見ているので、緊張で手が震えそうになるのを、ぐっと唇を噛み締めて堪えた。

「いきます」


的を狙って撃つ。弾は的の端のほうを漸くかすっただけだった。全然ダメだ。
恐る恐る光秀様の顔を見る。光秀様はとくに表情を変えずに言った。

「もう一度」
「はいっ」

2発目の弾を込め、種子島を構えると、ふと右の肩に何かが触れた。

「もっと力を抜け」

肩に乗っていたのは、光秀様の大きな手のひらだった。思わずびくりと肩が跳ね、顔がかっと熱くなる。なんとか肩の力を抜こうとしたのに、緊張で息が詰まり、余計に肩が上下した。

「…どうした?」

すぐ耳元で囁くように聞こえた、光秀様の艶めかしい声に驚き、私は思わず引き金を引いてしまった。

バンッ

全く狙いが定まっていなかったので、弾は的にかすりもしなかった。すっと血の気が引いて我に返った。

「申し訳ございません!」
「何を謝る?」

光秀様は微笑を浮かべたまま、もう一度、と言った。
今度こそ、と再び弾をこめる。銃身を構えるとまたしても肩に光秀様の手が置かれた。

「肩を下げろ」

光秀様の手が、するすると肩から腕へと滑り、種子島を握る私の手に重ねられた。
滑らかな冷たい指の感触に、思わず息が止まる。

「息を止めるな。操れ」
「は、…いっ」

光秀様は背中から私を抱きしめるようにしながら、私の構えを修正した。
私の背中に当たる、光秀様の固い胸の感触。冷たい指とは裏腹に、光秀様の胸は燃えるように熱い。
背中越しに光秀様の胸が静かに上下しているのを感じる一方で、私の呼吸はどんどんと浅くなっていく。

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