第17章 【信玄編・後編】※R18※
バタバタバタ…
寝床を追い立てられた複数の鳥たちが飛び立つ羽音で、信玄は目を覚ました。
夜明けが近いのか、戸板のすきまからうっすらと光が差している。
横を見ると、昨日の矢傷で血濡れた信玄の衣にくるまって、竜昌がすやすやと眠っている。
信玄は、起こさないように細心の注意をはらって、そっとその頬に口づけてた。
「ン…」
かすかに身じろぎをする竜昌。
それを目に焼き付けるように見届け、ふと唇に笑みを浮かべてから、信玄は竜昌の肩に手を置き、揺り起こした。
「起きろ、追っ手が来た」
「…!?」
ガバッと身を起こした竜昌は、一瞬呆けたような顔をしたが、すぐに枕元にあった刀を掴んだ。
「君は馬に乗って逃げろ」
信玄はそう言いながら、刀を持って、ガラリと戸を開けた。
朝もやに包まれた林は、夜明け前にしては騒がしい鳥たちの声が行きかっていた。二人を追い、林に分け入った侵入者を警戒しているのだ。