第17章 【信玄編・後編】※R18※
唯一、頭の片隅に残された理性で、必死に欲望を制御していた信玄の耳元で、息も絶え絶えに竜昌が言った。
「信玄…さまは……生きて…」
その瞬間、竜昌は身体の奥で熱い火が灯ったように感じた。
「あ、ウッ…」
信玄の摩羅は、意志を持った生き物のようにびくびくと蠢きながら、竜昌の中に大量の精を吐き出した。
初めて感じる、身も心も溶けあうような快感に、信玄は全身を震わせた。
【我が身は、成り成りて成り余れる処一処あり。故、此の吾が身の成り余れる処を以ちて、汝が身の成り合はざる処に────】
古事記の一節だ。
古来より、女の身の成り足らぬ所を、男が塞ぐのが男女のまぐわいというものだ。
ところがどうだ。
成り足らぬのは俺の心の方で、それを慈しみ、癒そうと包み込んでいるのは、竜昌の方ではないか。
信玄と同時に 再び気を遣ったのか、腕の中でふるふると震える竜昌の肩に顔を埋めながら、信玄は目を閉じた。
二人の意識は、そのまま静かに闇に呑まれていった。
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